流れ星の時季と副題
時季 | 三秋(初秋・仲秋・晩秋) 8月・9月・10月 |
副題 | 流星・夜這星・星流る・星飛ぶ |
流れ星の解説と俳句での活かし方
宇宙空間を漂う塵(小さな岩石や金属)は、引力によって地球に引き寄せられる際、地球を覆う大気とこすれあって激しく燃え上がる。
このとき放たれる光を地上から見たものが流れ星であり、隕石や隕鉄は燃えきれずに落ちてきた流れ星である。
地球は太陽の周りを一年かけて公転するが、その公転軌道の周囲に散らばる塵には疎密のばらつきがあり、八月上旬や十月中旬に地球が通過するあたりに特に塵が多い。
そのため秋になると多くの流れ星が空を駆け、八月上旬のものはペルセウス座流星群、十月中旬のものはオリオン座流星群と呼ばれる。
流れ星の幻想的な光を見ると、メルヘンの世界に引き込まれたような感覚になる。
星飛ぶや掌にいつぱいの金平糖
三木あゆみ
漁火の賑はひへ消ゆ流れ星
凡茶
流星や空き地の隅の三輪車
凡茶
ただ、その儚い光はすぐに消え去ってしまい、あとには何事も無かったかのように広くて静かな夜の闇が残る。
現代俳句には、その残された闇のもたらすもの寂しさを感じ取った作品が多いようだ。
星流る疑ふこともなく生きて
山口青邨
星とんでのち山国の闇厚し
柴田白葉女
夜這星峡にをろちの深ねむり
角川源義
峡:山と山に挟まれた場所
をろち:おろち。大蛇のこと
流星の使ひきれざる空の丈
鷹羽狩行
流れ星が消えるまでに願い事を三回唱えると、その願いが叶うという言い伝えがある。
だが、多くの流れ星は、見つけたと思った瞬間にはもう消えてしまっている。
さて、もの寂しさが味付けになっている流れ星の俳句が多い中、次の作品は異彩を放っている。
地の力充つ流星を容れしより
柴田白葉女
私もこういうスケールの大きな句を詠んでみたい。
季語随想
流れ星が消えるまでに、願い事を三回唱えられたことは一度もない。
三回どころか、ただの一回すら唱えることができない。
流れ星があまりに早く消え去ってしまうというのが一番の理由だが…
自分にしっかりとした願い事が無いというのも、とっさに願い事を言葉にできない理由の一つとなっている。
「願い事を減らせば減らすほど人生の肩の荷が下り、楽になっていく…」
歳を重ねるにつれ、そう感じることが増え、いつしか願い事を心の中に持とうとしなくなった。
未来を創ろうという心が老いたのだ。
もしかすると私たちの頭上をかける流れ星は、願いを叶えてくれるために現れるのではないのかもしれない。
「もう一度、お前の心の中に、願う心、未来を創ろうとする心を宿しなさいな!」
そう我々を励ますために、流れ星は現れるのかもしれない。
おわりに
ここまで当記事をお読みいただき、ありがとうございました。
大学院生の頃、「今夜は流星群がよく見えるらしいぞ」と学友に誘われ、学部棟の屋上にて徹夜で流れ星を観察したことがあります。
一睡もしなかったため、翌日は睡魔に襲われ、遠くの大学から集中講義にいらした教授の授業中に、何度も居眠りをしてしまいました。
本当に失礼なことをしてしまいました。
流星群のピークの翌日が土日などの休日なら、よかったのに。
今後、若い人たちがゆっくり流星群を観察できるよう、「どうか金曜日か土曜日の夜に流れ星が流れますように」と、流れ星を見かけたら祈っておきます。
さて、最後になりますが、下に並べた「天文の季語」「夜空の季語」などのタグをクリックすると、関連する季語を紹介するページが一覧で表示されます。
ぜひ、ご活用ください。