初写真 新年の季語・人事

初写真

初写真の時季と副題

時季新年 正月 1月
副題

初写真の解説と俳句での活かし方

初写真とは、新年になり初めて行う写真撮影や、その時撮った写真のことをいう。

嫁いだ娘、遠方に就職した息子などが正月に子供を連れて帰省し、久々に家族全員が揃ったところで行う記念撮影は、よい思い出となる。

思い切って新調した晴れ着を娘や孫に着せたり、中高年も、薄くなった髪を整えてお気に入りのスーツを選んでみたりと、楽しいひと時だ。

普段着の妻加はりて初写真
有馬いさお

初写真酔ふた子ひとり抜けてをり
平松千代子

父系顔母系顔あり初写真
凡茶

もちろん、初写真は家族・親族で撮るものとは限らない。

次の句の初写真は、年寄りばかりになった家族で撮ったものなのかもしれないし、いつの間にか髪の白くなった、小学校の同窓生が集まって撮ったものなのかもしれない。

よろこんで老人ばかり初写真
星野麥丘人

かつてはプロの写真家に年始の記念写真を撮らせる家も多かったが、セルフタイマーのついたカメラが普及し、昨今は減った。

なお、初写真の撮影は正月のめでたい行事なだけに、それを詠んだ俳句は少々の悪態あくたいもユーモアに変えてくれる。

初写真禿はげの遺伝子弟へ
凡茶

あまり多用される季語ではなく、歳時記に載る例句も多くはないが、かなり大胆・奇抜な表現も無理なく俳句に取り込んでしまう優れた季語である。

太鼓橋われらが占拠初写真
山口青邨

初写真子規しきの顔して撮られけり
内山思考

また、少々陰気な表現も、かえって読み手をほっと和ませるおかしみに変えてくれる季語でもある。

初写真なにゆゑ笑はざる吾ぞ
田口秋光

積極的に初写真の俳句を詠んでいきたい。

初写真2

季語随想

私も、弟も、大学進学で郷里を離れた後、Uターンせずに別の場所で職に就いた。

そのため、長い間、実家で母を一人暮らしさせることになった。

当時、そんな母の生活の張り合いになっていたのが、飼い猫のミーちゃん(三毛猫)の世話である。

すでにミーちゃんは星になったが、あの頃、母にとって彼女は、息子たちとかわらないくらい大切な、家族の一員であった。

一度、冗談に、ミーちゃんをいくらだったら別の飼い主にゆずるかと聞いたところ、「一億円積まれたって売らないよ」と返された。

年金のかなりの部分を猫の餌代や、猫のための暖房費にてていた母。

それほどの愛情を受けていると、当の猫は気付いていたのやら、いなかったのやら…

胸の猫だけそつぽ向く初写真
凡茶

おわりに

ここまで当記事をお読みいただき、ありがとうございました。

記事の冒頭に掲げたイラストは、筆者自らが描いたものです。

酒好きの祖父と、掃除好きの祖母、そして父がまだ生きていた、我が家が六人家族だった頃を思い出しながら描きました。

描いているうちに、いろんなことが脳裏によみがえってきて…
なんだか、、泣けてきちゃったなあ。

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