とにかく一句目を作ってみる
「俳句とは何か(初心者向け)」のページにも書きましたが、俳句とは、季語の入った五・七・五音の短い詩です。
実にシンプルです。
こんなにシンプルなのですから、「未経験の私に俳句なんて作れるのだろうか…」などと臆する必要はありません。
とにかく気楽に一句目を詠んで(=作って)みましょう。
「恥ずかしくない作品を作らなくちゃ」などと、最初から気負う必要はありません。
実践例を示します。
初めての俳句作りの実践例
寒い冬がやって来たのに、子供たちが外で元気に缶蹴り遊びをしている様子を、たまたま見かけたとします。
そして、その子供たちの中に白人の子が混じっていて、ああ、このあたりも国際化が進んだものだと、多少の驚きを覚えたとします。
そこで、ごくごく気楽に次のような俳句を詠んでみます。
白人の子も缶を蹴る寒い冬
(試作①)
どうですか?
この程度の俳句なら、初心者でも詠めると思いませんか?
まずはこの程度の俳句を、肩に力を入れずに、楽な気持ちで作ることから始めてみましょう。
じっくり俳句を育てる(推敲)
さて、上のように気楽に作った俳句ですが、どんな平凡な俳句であっても、どんな稚拙な俳句であっても、それは磨けば宝石となって光る可能性のある貴重な原石となります。
つまり、後からの推敲により、気楽に作った俳句が、納得のいく作品に仕上がっていきます。
さっそく上の試作①の俳句を、推敲によって育てていきましょう。
この俳句で最も気になるのは「寒い冬」の部分です。
冬が寒いのが当たり前なので、わざわざ「寒い冬」などと説明する必要はありません。
余分な言葉が入ると、俳句がくどく、重たくなってしまいます。
そこで、歳時記をめくって、「寒い冬」よりもっと良い季語を探してみましょう。
歳時記とは、春夏秋冬・新年の季節ごとに分類された季語について解説した字引、つまり季語辞典です(歳時記については、別のページで丁寧に取り上げます)。
俳句を始める人は、この歳時記だけは書店で買っておく必要があります。
さて、歳時記をめくっていくと、冬が到来して間もない頃を示す「冬はじめ」という季語が見つかりました。この季語と「寒い冬」という言葉を取り替えてみます。
白人の子も缶を蹴る冬はじめ
(試作②)
季語を変えるだけで、俳句がグーンと良くなった気がします。
次に、「缶を蹴る」という部分を直していきます。
「缶を蹴る」という行為は子供に限らず、機嫌が悪い時の大人もする行為です。
やはり「缶蹴り」という表現をきちんと用いないと、子供の遊びであることをしっかり読者に伝えられません。
そこで、「缶を蹴る」を「缶蹴りす」に改めてみましょう。「缶蹴りす」の「す」は、現代の「する」にあたる古語です。
白人の子も缶蹴りす冬はじめ
(試作③)
だいぶ良い俳句になってきました。
次は「子」という言葉が余分なので削っていきます。
「缶蹴り」という語を目にして、子供の遊んでいる姿を想像しない人はいません。
ですから、「子」という言葉をわざわざ使う必要はないのです。
俳句はわずか17音の短い詩です。
余分な言葉は極力削いでスッキリさせましょう。
白人の混じる缶蹴り冬はじめ
(試作④)
さらに磨く(仕上げ)
既にいっぱしの俳句が出来上がったという感じもしますが、最後にもうひと磨きしてみましょう。
「白人」という語ですが、なんだか学術用語のようでかたい感じがしませんか?
無邪気な子供たちの遊ぶ光景を詠んだこの俳句には、どうも馴染まない気がします。
そこで、「白人」のかわりに「青き眼」という言葉を使ってみましょう。
やわらかい感じがしますし、「青」という色が入ると、俳句全体の印象を支配している初冬の寒さが、一層増すような気がするからです。
青き眼の混じる缶蹴り冬はじめ
凡茶
これで一句が完成しました。
これから俳句の道に踏み出す方は、上述の実践例のように、まずは気楽に季語を入れた五・七・五音の俳句を作ってみましょう。
そして、歳時記をめくったり、あれこれ言葉を入れ替えたりしながら、その俳句をよりよい作品へと磨きあげていきましょう。
こうしたことの繰り返しで、俳句作りの腕が上がっていくはずです。
おわりに
ここまで当記事をお読みいただき、ありがとうございました。
実は、拙句「青き眼の混じる缶蹴り冬はじめ」は、俳句を紹介するカレンダーに掲載されたことのある思い出の作品です。
俳句を始めて間もない頃、自分の句がベテランの方々の作品と並んでカレンダーに載り、すごく嬉しかったことを覚えています。
皆さんも、俳句を続けていくと、そんな幸せ気分を何度も感じることになるでしょう。