初雪の時季と副題
時季 | 初冬・仲冬 11月・12月 |
副題 | はじめての雪 |
初雪の解説と俳句での活かし方
その冬、はじめて降る雪のことを初雪と言う。
長く不便を強いられる雪の季節の始まりなのだが、なぜだか、初雪を見ると心が躍る。
かさかさしていた気持ちが潤いを取り戻し、昨日までの煩わしさを全てご破算にして、新たな一歩を踏み出したくなる。
俳句でも、本格的な冬到来の重々しさよりも、清新な気分、晴れやかな気分を詠んだ句の方が多い。
初雪や今年のびたる桐の木に
野水
初雪や俥とめある金閣寺
野村泊月
俥:人力車
初雪や仏と少し昼の酒
星野椿
初雪や幼きピアノお寺より
凡茶
初雪や同郷誘ひガード下
凡茶
他方、初雪は、儚さ、寂しさ、静かさのようなものを表現するのにも適する。
初雪はドカ雪になることもあるが、多くの場合降ってもすぐに消えて無くなってしまうためだ。
初雪や門に橋ある夕間ぐれ
其角
初雪や波の届かぬ岩の上
淡々
初雪やうけてをる手のそとに降る
千代女
はじめての雪闇に降り闇にやむ
野澤節子
初雪や俵の上の小行灯
一茶
また、初雪を見ると、我々の暮らす地上が、何か深いやさしさのようなもので包まれていくような、そんな心地になる。
初雪や積木を三つ積めば家
片山由美子
初雪や少年院へ運ぶパン
凡茶

季語随想
初雪が降りはじめた。
落ち葉、枯れ木、枯草…
昨日までのかさかさとした褐色の風景が、しっとりと清々しい白い風景に変わっていく。
考えてみると、昨日までの俺は、時計と財布ばかり気にしていた。
…
久しぶりに本屋めぐりに出かけてみよう。
本屋をはしごしながら、
本当に勉強したいって思えることを見つけてみよう。
立身出世に役立つとか、役立たないとか…
儲けを生むとか、生まないとか…
そういうこと一切考えずに、
ただひたすら勉強してみたいって思えることを、見つけに行こう。
初雪や路の左右に古本屋
凡茶
おわりに
ここまで当記事をお読みいただき、ありがとうございました。
上に「(初雪の俳句には)本格的な冬到来の重々しさより、清新な気分、晴れやかな気分を詠んだ句の方が多い」と述べました。
でも、雪国の北信濃に暮らした小林一茶の下記の句からは、清新で晴れやかな気分というより、厳しい雪の季節を迎える陰鬱な気分、あるいは諦めの気持ちのようなものを私は感じるのですが、皆さんはいかがですか?
はつ雪を降らせておくや鉢の松
一茶
はつ雪に白湯すゝりても我家哉
一茶
また、一茶は、次のような謎の多い初雪の句も残しています。
初雪や一二三四五六人
一茶
一二三四五六人の部分、「いちにいさんし・ごろくにん」と読むのか、それとも「ひぃふぅみぃよぉ・いつむたり」と読むのか?
また、この一二三四五六人は、どのような人物たちで構成されているのか?
竹馬やいろはにほへとちりぢりに
久保田万太郎
の句に出てくるような冬でも元気な子供たちでしょうか?
それとも「ああ、いよいよ雪の季節が来てしまったか…」と物憂げに空を見上げる大人たちでしょうか?
私は後者を想像してしまうのですが、読者の皆さんはいかがですか?
さて、最後になりますが、下に並べた「天文の季語」「雪・霜などの季語」などのタグをクリックすると、関連する季語を紹介するページが一覧で表示されます。
ぜひ、ご活用ください。