初春(はつはる)の時季と副題
時季 | 新年 正月 1月 |
副題 | 新春 迎春 ○○の春 ○○が春 |
初春(はつはる)の解説と俳句での活かし方
「初春」を「しょしゅん」と発音する場合は立春からの約1か月間を指す春の季語となるが、「はつはる」と発音する場合は、新年を指す季語となる。
はつはるの紋十郎にをんなの香
飯田蛇笏
紋十郎:人形浄瑠璃の人形遣い。桐竹紋十郎。
初春の二時うつ島の旅館かな
川端茅舎
初春の灯をともしゐる沖の船
中川宋淵
副題として掲げた新春と迎春も、新年を指す季語である。
新春や綱紅白に神の牛
中山咲枝
迎春や油の氷る壜の中
小沢碧童
ところで、寒い冬のさなかに訪れる新年を、初春・新春・迎春などと「春」の字の入る熟語で呼ぶのはなぜか。
それは、明治5年まで用いられた旧暦においては、立春の前後を年始としていたが、その習慣が残っているためだ。
つまり、旧暦では、雨水(立春の約15日後。現在の2月18日・19日頃)の直前の朔(新月)の日を元日と定めていたため、新年は立春の約15日前から約15日後の間の、いずれかの日に訪れた。
旧暦の時代は、新しい年と新しい春がまさに同時期に訪れていたのだ。
ゆえに現在も、年始を寿ぐ言葉として「春」の語が用いられる。
この、寿ぎの「春」の語は、他の様々な語と結びつき、「○○の春」や「○○が春」の形となって俳句に詠み込まれることが多い。
鐘一つ売れぬ日はなし江戸の春
其角
ほのぼのと鴉くろむや窓の春
野坡
牛馬の物喰ふ音や民の春
蓼太
目出度さもちう位也おらが春
一茶
こけし古り埴輪あたらし年の春
百合山羽公
炭斗に炭も満ちたり宿の春
松本たかし
炭斗:火鉢や炉に継ぎ足す炭を入れておく器
同じ書のいくつもありて書架の春
池上浩山人
書架:本棚
筆立てに耳かきささる今朝の春
凡茶
このほかに、花の春、老の春、千代の春、明の春、四方の春などの組合せも多く見られる。

季語随想
年が改まり、去年と言う焼却炉が新設された。
その焼却炉に、心の中のごみを次々と放り込んでみた。
「挑戦しよう!」と決意するたびに膨れ上がった「恐怖」というごみ。
「頑張り過ぎずに休もうかな…」と思うたびに湧いて出てきた「罪悪感」というごみ。
「もう許そう… もう折れよう…」って気持ちになるたびに、それを邪魔してきた「片意地」というごみ。
そんなごみたちを去年という焼却炉で燃やしてしまったら…
それまで暗く凍っていた空が、途端に緩んで明るく見えはじめた。
実際は冬至から間もない厳冬期なのに、風景に春が宿った。
捨て切つて真水一杯四方の春
凡茶
おわりに
ここまで当記事をお読みいただき、ありがとうございました。
拙句を一つ紹介し、この記事を締めくくりたいと思います。
ハモニカを海に聞かする老の春
凡茶
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