はじめに
俳句とは何か(初心者向け)のページで、「俳句とは、季語を入れた五・七・五音の短い詩」であると書きました。
五・七・五字ではなく、あえて五・七・五音と表現したのは、俳句の五七五は「文字の数」ではなく、「音の数」を数えたものだからです。
例えば「チョコレートパフェ」という語の文字数は九字ですが、音数ではチョ/コ/レ/ー/ト/パ/フェの七音となります。
初心者が間違えやすいところですので、ここできちんと学んでおきましょう。
小さな「ゃゅょ」は前の字と合わせて一音
小さな「ゃゅょ」はそれだけでは一音となりません。
前の字と合わせて一音となります。
次の私の俳句を見てください。
朱の点となりし気球や雪だるま
凡茶
この俳句を平仮名に直すと、六・八・五字になりますが、「しゅ」と「きゅ」は一音として数えるので、定型がきちんと守られています。
しゅ/の/て/ん/と
五音
な/り/し/き/きゅ/う/や
七音
ゆ/き/だ/る/ま
五音
小さな「ァィゥェォ」も前の字と合わせて一音
小さな「ゃゅょ」と同様に、小さな「ァィゥェォ」も前の字と合わせて一音となります。
次の句に用いた「カフェオレ」の語は五文字で表記されますが、小さな「ェ」はそれだけで一音とはならず、前の「フ」の字と合わせ「フェ」で一音となりますので、この単語の音数は四音となります。
よって、次の句は定型を守っています。
窓の蛾とこのカフェオレと同じ色
凡茶
ま/ど/の/が/と
五音
こ/の/カ/フェ/オ/レ/と
七音
お/な/じ/い/ろ
五音
小さな「っ」はそれだけで一音
小さな「ゃゅょ」や「ァィゥェォ」とは異なり、小さな「っ」はそれだけで一音となります。
ですから、次の句の中七は字足らずの六音にはなっておらず、きちんと七音になっています。
豚積んでトラック雷の鳴る方へ
凡茶
ぶ/た/つ/ん/で
五音
ト/ラ/ッ/ク/ら/い/の
七音
な/る/ほ/う/へ
五音
音を伸ばす「ー」(長音符)も一音
音を伸ばす「ー」、すなわち長音符も、それだけで一音となります。
ですから次の俳句の「ラーメン屋」は五音の単語となります。
短日やラの字灯らぬラーメン屋
凡茶
た/ん/じ/つ/や
五音
ラ/の/じ/と/も/ら/ぬ
七音
ラ/ー/メ/ン/や
五音
諳(そら)んじておきたい俳句
ここまで、筆者の詠んできた俳句だけを例に、小さな「ゃゅょ・っ」や長音符「ー」などを含む語の音数について学んできました。
ここでは、他の俳人が詠んだ句も、例句として掲げておこうと思います。
初心者が参考にしやすい、次の三つの条件を満たす俳句を探し出して、掲げておきました。
●小さな「ゃゅょ」、小さな「っ」、長音符「ー」の三種類が、一句の中に全て含まれる。
●その三種類が、上五、中七、座五にわかれて含まれる。
●平明である
例句は二つありますが、まずは一句目。
メーデーや我が青春のコッペパン
原昭二
メ/ー/デ/ー/や
五音
わ/が/せ/い/しゅ/ん/の
七音
コ/ッ/ペ/パ/ン
五音
この作品、上五に長音符「ー」、中七に小さな「ゅ」、座五に小さな「っ」が含まれています。
次は、二句目。
ラグビーの花はタックル巨躯倒す
粟津松彩子
巨躯:とても大きな体
ラ/グ/ビ/ー/の
五音
は/な/は/タ/ッ/ク/ル
七音
きょ/く/た/お/す
五音
こちらは、上五に長音符「ー」、中七に小さな「っ」、座五に小さな「ょ」が含まれています。
なお、この句の季語はラグビーであり、ラグビーは冬の季語です。
さて、これら二句のうちの、いずれか一方でも諳んじて(暗唱して)おくと、小さな「ゃゅょ・っ」や長音符「ー」などを含む語の音数で迷わなくなり、便利です。
役立てましょう。
おわりに
当記事をお読みいただき、ありがとうございました。
上掲の「メーデーや我が青春のコッペパン(原昭二)」と「ラグビーの花はタックル巨躯倒す(粟津松彩子)」の二句ですが、歳時記めくりやネット調べを徹夜で行い、ようやく見つけた例句です。
適当な俳句がなかなか見つからず、一度は諦めて、自分で条件に合う俳句をひねりました。
最後に、せっかく作ったその句を紹介して、このページを結びます。
コーヒーや窓いつぱいの樹氷原
凡茶