扇風機の時季と副題
| 時季 | 晩夏 7月・8月 |
| 副題 | - |
扇風機の解説と俳句での活かし方
扇風機は、電気の力ではねを回し、涼を求める人に風を送る機械である。
扇風機籠のレモンに風送る
横山白虹
扇風機人形劇の幕を吹く
牧野春駒
扇風機蔵書を吹けり司書居らず
森田峠
青き羽根より青き風扇風機
有田一炊
ふるさとの板の間にをり扇風機
岩城久治
扇風機を置かぬ家は少ないのではないだろうか。
特に、エアコン、クーラーの無い、筆者が暮らすような田舎の古い家や、学生時代に筆者が暮らしたような都会の安アパートでは、今も住人を暑さから守るために大活躍している。
日常生活に密着した家電であり、これを詠んだ俳句には、生活感の生々しい作品が多い。
卓布吹きやがてわれ吹き扇風機
星野立子
扇風機さげて嫁いで来し妻よ
轡田進
残み止しのお茶揺れてゐる扇風機
凡茶
扇風機は、昭和の後期から普及し始めたエアコン、クーラーよりもずっと早く、明治には商品化され、大正には量産されるようになっていた。
そのため、時代が進むにつれて、昔ながらの家電というイメージを強くまとうようになり、レトロな味わいの俳句を詠むのに適した季語になりつつある。
首こきと鳴る骨董の扇風機
佐藤鬼房
駄菓子屋の奥見えている扇風機
斎藤夏風
方丈の五桁算盤扇風機
中村石秋
方丈:禅寺の住職の居室
ゆりかごに向けて昭和の扇風機
凡茶
ところで、この扇風機という季語の時季であるが、初夏・仲夏・晩夏の三夏の季語としている歳時記が多いように思う。
ただ、やはり、扇風機が最も存在感を発揮するのは、梅雨明け後のうだるような暑さが続く時季であり、当サイトでは晩夏の季語、7月から8月の俳句に用いるのがおすすめの季語として紹介することにした。
扇風機は、古今の俳人によって詠み尽くされたメジャーな季語というわけではなく、「扇風機の一句と言ったらこれ」という代表作が定まっているということもない。
これからの俳人に扇風機の国民的名句を生み出す余地が大いに残されている。
当サイトの読者の中から、そんな佳句を詠む人が現れることを願っている。

季語随想
我が家には未だクーラーが無い。
標高800mの高冷地にあり、真夏でもそれなりに涼しいというのが一つ目の理由。
クーラーは高価につき、なかなか買う決心がつかないというのが二つ目の理由。
そして三つ目にして最大の理由は、この私が、扇風機の風にあたることが大好きであるということ。
子供の頃は、遊んで帰ってくると棒付きのアイスをしゃぶりながら、扇風機の風で汗を乾かすというのが、夏の決まりごとだった。
その時間が大好きだった。
今でも、扇風機の前に横たわり、体の熱を冷ましていると、騒がしく、忙しかった頭の中や心の中がだんだんと閑になって、ひたすらボーッとすることができる。
さすがに子供の頃のように、強風ボタンを押したまま何時間でも涼んでいるということはなくなったが。
扇風機昼の夢覚め閑なり
凡茶
おわりに
ここまで当記事をお読みいただき、ありがとうございました。
次の俳句に登場する扇風機がそうであるように、我々中高年にとって扇風機は、羽根を持つことが当たり前の家電でした。
扇風器大き翼をやすめたり
山口誓子
ところが近年は、羽根を持たぬ扇風機も売られるようになったとのこと。
技術って本当に目まぐるしく進歩していきますね。
近い将来、羽根つき扇風機の句を詠んでも、若い読者はきょとんとして、句意を理解できない時代が来るのでしょうか?
さて、最後になりますが、下に並べた「夏の季語・人事」「住生活の季語」などのタグをクリックすると、関連する季語を紹介するページが一覧で表示されます。
ぜひ、ご活用ください。

