短日の時季と副題
| 時季 | 初冬・仲冬 11月・12月 |
| 副題 | 日短し・日の短か・日短・日短か・暮早し |
短日の解説と俳句での活かし方
冬はあっと言う間に日が暮れてしまい、昼が随分と短く感じられる。
その感覚を短日と言う。
短日のせわしない感覚は、日に日に昼間が短くなるのを実感する11月中頃から強くなる。
そして、最も昼の時間が短い12月下旬の冬至の頃に極まる。
この感じは正月、小正月を過ぎ、「日脚伸ぶ」の感覚が得られるようになる1月中頃にはだいぶ弱まる。そこで、当サイトでは、この季語の時季を三冬ではなく初冬と仲冬、11月と12月としてみた。
昼の短さは、裏返せば夜の長さであるから、「短日」が冬の季語であるなら、「夜長」も冬の季語でよいと思う人もいるかもしれない。
しかし、歳時記で「夜長」は秋の季語に分類されている。
あっと言う間に夜が明けてしまう夏の直後の秋の方が、実際には最も夜の長い冬よりも、夜長の静かさを満喫する気持ちが高まるからであろう。
「日永」が春の季語、「短夜」が夏の季語になっていることと併せて、日本人の季節感の細やかさを感じる
短日のはや秋津嶋灯しけり
飯田蛇笏
秋津嶋:日本の本州の古称。あるいは日本の美称
短日や母来て妻をつれ去りぬ
神蔵器
短日の日本海鳴る下校かな
大峯あきら
短日の智恵の輪あつけなく外れ
深海龍夫
短日やラの字灯らぬラーメン屋
凡茶
短日は、日短し、日の短か、日短などと表現することも出来る(日短は、送り仮名の「か」をつけて、日短かと表記することも多い)。以下に例句を示すので、参考にするとよい。
大阪に三日月上り日短し
前田普羅
明治村歩き尽くせず日の短か
山田眞爽子
日短かやかせぐに追ひつく貧乏神
一茶
なお、歳時記を繰ると、下五が日短(日短か)だけの字足らず、すなわち「ひ/み/じ/か」の四音になっている俳句をいくつも見かける。例えば、次のような俳句だ。
買物はたのしいそがし日短
星野立子
用多き机のメモや日短か
吉屋信子
これは、日短の季語は、「ひ_みじか」のように、「ひ」の字と「み」の字のあいだに「間」をとり、五音のように読むこともできるからだ。
そのため、字足らずが気にならない。
また、こうするとで、短日らしいせわしなさが強調されて、かえって面白い句になることがある。
あるいは、日短は、「ひ」と「み」の間に「ぃ」に近い音を入れ、「ひぃみじか」と関西弁のように発音しても五音に聞こえる。
大阪の陰食ふ鼠日短
凡茶
初冬・仲冬に、関西で俳句をひねる機会を得たら、遊び心で「ひぃみじか」を使ってみるのも面白い。
字足らずについては、当サイトの「字足らずの俳句」というページでも詳しく解説しているので参照されたい。
なお、季語「短日」には、「暮早し」という副題もあり、これもよく使う。
紙漉を見て彳めば暮早き
富安風生
暮早し小言小出しに子を使ふ
田仲晶
一句目の「暮早き」は句に余韻を持たせるための連帯止め。「早く暮れたことだよ…」のような感じで味わうとよい。

季語随想
四半世紀以上も前になるが、郷里から遠く離れた都会で働いていた時期がある。
日の短い季節になると、その頃アフターファイブを楽しんだ、夕間暮れの街騒をよく思い出す。
師走ともなると、定時に仕事を終え職場を出ても、すでに都会は夜を迎えようとする色とりどりの光で溢れていた。
甘いクリスマスムードを演出し、年末年始の品々を店先に飾る表通りにも、ボーナスが出て気が大きくなったサラリーマンでごった返す裏通りにも、宝石のような光が散りばめられていた。
人混みが苦手で都会を離れ、もう何年も田舎に引っ込んでいるこの私でさえ、日が短くなるとあの頃の街騒が懐かしくなる。
ネオンが、市場町の隘路にあふれる威勢のいい売り声が、歓楽街の馴れ馴れしい客引きが、街角で売る肉まんの湯気が、ガード下の焼き鳥とおでんの匂いが、恋しくてたまらなくなる。
国民みんなに活力と笑顔があった一億総中流の時代の、都会の街騒が懐かしい。
…そんなことを考えているうちに、わが田舎の駅前通りも、ポツン、ポツンと灯り始めたようだ。
シャッターが下りたままの空き店舗の目立つ元気の無い街だ。
人々が、労働者としても、消費者としても産業を盛り上げ、産業もまた人々の生活を支えた一億総中流の時代の、あの活気はもうない。しかし、頑張っている店もまだまだあるようで…。
今日は駅前通りで食事を済ませてから帰宅しよう。
短日やラの字灯らぬラーメン屋
凡茶
おわりに
ここまで当記事をお読みいただき、ありがとうございました。
下に並べた「冬の季語・時候」「12月の季語」などのタグをクリックすると、関連する季語を紹介するページが一覧で表示されます。
ぜひ、ご活用ください。
最後に、たった今、脱稿の直前に思いついた俳句を二つ並べて、この記事を締めくくります。
サンダルの美男子急ぐ日短
凡茶
サンダルの美男子転ける冬の虹
凡茶

